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2020/10/20

【KAORIUM JOURNAL #09】地域マーケティングの切り札!香りから紡ぐストーリーで、地域ビジネスを開発する

「香りと言葉」が導く超感覚を追求する KAORIUM JOURNAL。セントマティック代表 栗栖 俊治が、香り × 言葉がもたらす未来について様々なスペシャリストと対談しその様子をお届けします。

日本が本格的な人口減少社会に突入し、国の重点政策の一つとして「地方創生」が掲げられる中、日本全国では様々な地域活性化に関する取り組みが行われてきました。また、新型コロナの社会情勢を受けて、ニューノーマルの地方創生のあり方が求められています。そこで、 KAORIUM は、感性教育の視点から香りと地域活性化を組み合わせ、地域の魅力を発掘する「 KAORIUMクリエイティブアワード 」を実施します。今回の対談では、日本全国で数多くの地方創生事業を手がけるビジネスプロデューサーであり、起業家やイノベーターの養成に専門的知見を持つビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)経営学部グローバル経営学科 学科長・教授の谷中 修吾をゲストとして招き、香りから「地域資源の理解」「地域の起業家教育」「地域マーケティング」「地域ビジネスの開発」を生み出すという「KAORIUMによる地域創生」の可能性を掘り下げていきます。

「KAORIUM(カオリウム)」とは

五感の中でも最も未知な領域であり、新たな発見や市場創出が期待されている「嗅覚」。そのポテンシャルを追求するため、「香り」と「言葉」を紐づけ相互に変換するAI型システム「 KAORIUM (カオリウム)」が開発されました。香りから言葉を連想し、言葉から香りを想像することは、脳の活性化につながるだけでなく、私たちのまだ見ぬ感性に気づかせてくれます。
そんなKAORIUM体験は、感性教育、飲食体験、購買体験など様々な分野に新しいビジネスチャンスを生み、そして人々の感受性に働きかけ、日々をより豊かなものにする可能性があります。

故郷の原体験が導いた地方創生まちづくり

栗栖 香りを事業化していく時、「地方」という文脈も考えていました。その時に谷中さんと初めてお会いして、ものすごい量のアイデアをいただいて、さすがだなと驚きました。ビジネスや事業、地方創生などにものすごく知見をお持ちなだけではなく、谷中さんのキャリアはもはや一言では言い表せないですよね。

谷中 ありがとうございます。一言で表現するならば、ビジネスプロデューサー。突き抜けたアイデアを生み出して、超速で事業化する専門家です。これまで多種多様なビジネスの立ち上げをしてきたので、最初に栗栖さんからKAORIUMの動画を見せていただいた時、いろいろな領域で事業が広がるイメージが湧きました。

ビジネスプロデューサーには、事業化のプロセス全体を総指揮するスキルが求められるので、専門技能に分解すると30職種くらいは持っています。戦略コンサル、コピーライター、映像ディレクター、ウェブデザイナー…、すべて1人でやります。ですから、近くにいる人からすると、たくさんの職業をやっているように見えるでしょうね(笑)。ただ、私がビジネスプロデューサーになったのは、全て「まちづくり」を目指して専門技能を習得してきた結果なんです。「まちづくり」に関わるために、事業を立ち上げる「経営」、人に伝える「メディア」、担い手を育てる「教育」という三つの領域のスキルが必要だと思って習得してきました。ですので、地方創生まちづくりを手掛けるビジネスプロデューサーというのが、私の職業としての最上位概念になっています。

栗栖 その「まちづくり」という軸は、どのようにして生まれたのですか?

谷中 私は、静岡県の浜名湖の西側にある湖西市の出身で、いわゆる「古き良き田舎」で育ちました。家の庭にはバードウォッチングの宝庫のように鳥がたくさんいて、野生のうさぎが出没するくらいの環境でした。海岸では赤ウミガメの産卵も見ることができて、とっても自然にあふれた地域だったんです。ところが、小さい頃、田んぼや畑がどんどん工場地帯になって、気がつくと実家の周辺は無機質なアスファルトだらけになっちゃったんですよね。自動車産業を中心とする工場地帯の拡張。まちの景色はみるみる変わっていきました。結果的に、地域としては経済的に潤っていったわけですが、道路ばっかり増えて、トラックの騒音は激しくなって、自然が失われていく。変わっていくまちの姿を目の当たりにして、幼いながらに「このまちづくり、微妙だな」って思っていたんですよね。「もし、自分がまちをつくる立場だったら、もっとこうするのに…」と思ったのが、現在の自分を突き動かしている原体験です。

栗栖 その頃からの思いがそのまま継続されていったってことなんですね。

谷中 はい。それで、ちょうどその頃、テレビの再放送で観た映画が、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』。映画の中で描かれていた「風の谷」で、人々が自然と共存共生している姿に、強いインスピレーションがありました。自分の理想は、これだなと思ったんです。「風の谷」の人々が腐海のほとりで生活しているという境遇が、浜名湖のほとりで生活していた自分の境遇と似ていたということもあって、「風の谷」のような社会をつくりたいと思うようになりました。

栗栖 すごく共感します。実は、KAORIUMの企画も、石垣島や南フランスへ行ったとき、美しい景色の中で香水をつくったり、好きな香りを選んだという僕たち自身の体験から生まれたんです。香りを意識して言葉にしようとすると、強烈に記憶に残る。自然の美しい風景の中で香りを選び、言葉とともに楽しんでもらう場が、誰かの原体験になればいいなと思ったんです。

谷中 すばらしいですね。特に、香りと言葉に注目したところが、非常に面白いと思います。私は旅が好きなんですけど、初の海外旅行でインドに行ったとき、現地で感じた「インドの香り」は強烈だった。どうやって言葉で表現したらいいか分からなかった。だけど、あの時、旅日記で、その嗅覚的な体験を表現する言葉を考えたんですよね。「異次元の…」「生と死が交錯するような…」「エキゾチックな…」などと、なんとか言葉に変換しようとした。すると、不思議なことに、脳内に新しい回路が開かれるような感覚があったんです。今でも、インドっぽい香りを感じると、すぐさま自分が旅先で見た風景が鮮明に蘇ります。現地の香りの体験を言葉によって定義したことで、強烈な原体験に昇華されているように思います。

地方は香り資源の宝庫!香りでタイムスリップ体験も!?

谷中 私は普段、まちづくり分野のビジネスプロデューサーとして、日本全国の地方創生事業を手掛けているのですが、まちづくりの集合知を広く社会にシェアするために、地方創生イノベータープラットフォーム「INSPIRE(インスパイア)」という非営利法人を経営しています。日本全国に1万人のイノベーターコミュニティーがいまして、みんなと一緒に「KAORIUMのような香りと言語をつなぐシステムがあったら、地方創生まちづくりの文脈で、どんな事業ができるだろうか」というブレストをやらせていただきましたよね。

栗栖 たくさん面白いアイデアをいただきました。どう事業化させるかを考えてた時、当時の僕らは香りだけに着目していたんですけども、そこを広げていただきました。地方創生に絡めるようにアイデアいただいたのもこの時期でしたよね。

谷中 例えば、地域風土を生かして造られた日本酒。その香りを言語化してメニューをつくる。お店でメニューを開いた時、そこに書かれているのはすべて香り言葉のみ。そういう「香りの日本酒バー」があったら面白そうじゃないかというアイデアもありましたよね(笑)。 あと、花見の季節には、全国の桜の香り言葉を地図上にプロットすることで、幻の香りを持つ桜を発掘しようとか。新しい地域観光コンテンツを生み出すアイデアもいろいろ出ました。

栗栖 地方は香り資源の宝庫。ゆずなどの果物や、地元の特産品とか名物になるものってたくさんあります。

谷中 歴史的な建造物と香りを結びつけるというアイデアもありましたね。源氏物語のように、平安時代の物語には「香りの描写」が数多く見られますが、そもそも香りの表現は時代によって違います。そこで、建造物の時代背景に合わせて、当時の書物に記された香り表現を紐解く。その文化施設で、実際に香りを再現してみせる。そうすると、全国の歴史的な建造物を訪ねながら、歴史を嗅ぐことができるわけです。まさに、「その時、歴史はニオった!」みたいな。

栗栖 例えば、中尊寺金色堂の香りをKAORIUMで再現すると、今までと全く違う体験ができるんだろうな。単純に観光名所を見るだけでなく、当時の情景を忠実に再現できたりする。「この城は誰が建てた」という情報を知ったり、城壁や庭園など視覚的に楽しむのが今の観光名所の楽しみ方のスタンダードですが、そこに、香りが入ってくることによって、新しい体験ができそうですよね。

谷中 そうですね。源氏物語で書かれている香り表現に基づいて、実際に当時使われていたお香の素材を使ってリアルに香りを再現するって、すごくワクワクしますよね。その再現された香りが、中尊寺金色堂などの歴史的建造物に炊き込められていたら、もう瞬間的にタイムスリップですよ。

栗栖 ものすごく良い地域創生のアイデアだと思います。歴史的建造物を香りで表現することで、新しい地域の魅力を伝えることにつながりますし、新しい体験を提供できます。それによって、観光客や地元の人が、地域の魅力を再発見することにもつながるんじゃないかなと。

谷中 香りによって、地域の歴史的観光スポットが、時空を超えて当時の状態に戻る。日本全国に歴史文化遺産はたくさんありますので、そこで香りの次元を加えた体験価値を提供するというのは、凄いイノベーションにつながると思います。

子供クリエーターが大活躍!地域の香りから生まれる物語「KAORIUM クリエイティブアワード」

栗栖 谷中さんには今年の夏に行った、花の香りから物語をつくる全国の小学生向けオンラインワークショップの KAORIUM クリエイティブアワード の審査員も行っていただきました。

谷中 作品を見させていただきました。バラの香りをかいだだけなのに、言葉として表現する時の擬音語・擬態語の使い方がすごかった。小学生とは思えない表現や世界観、ストーリーの展開まで、率直に感心させられました。

栗栖 「雨がパラパラと降る」とか、「チョンと座っていた」とか、大人にも書けない広がり感があったり、記憶というか、発想というか。ブレイクスルーを起こしちゃってますよね。

谷中 そう言えば、コロナ自粛中に昔の作品を整理していたら、自分の小学生の時の日記が出てきたんです。日記なので「今日は〇〇しました」とか、事実を語るじゃないですか。もちろん、それはそれで面白いのですけど、ただの日記というのは、妄想的なストーリー表現ってなかなか出てこない。一方、KAORIUMは香りからアプローチすることで、表現の仕方に関するメンタルブロックが外れるので、ボキャブラリーや表現の幅に広がりが出る。自由なストーリーになる。ここがすごく面白いと思いますね。

栗栖 プログラムですごく気をつけてるのが、「表現に正解がないということ」を伝えてるんですけど。自由に発想していいよって。それが子供の素直な表現と自信につながっているんです。

谷中 今回、香りの対象として「ロスフラワーのバラ」が使われたことも、すごくいいなと思いました。これにヒントを得て、香りの対象をいろいろ考えると、地域の素材を使うというのも魅力的ですね。紡がれたストーリーが、そのまま地域コンテンツの開発になるので、地方創生につながると思うわけです。

例えば、このバラと妖精さんの作品なのですが、「妖精さんがバラのお花畑に行きました。そこのバラを見て妖精さんは、動物を呼び出しました。」とあります。地域に観光に行った本人を「妖精さん」として考えると、バラを見るために現地に行って、動物キャラに相当するホストさんを呼び出したと解釈することができます。「そして、そのお花畑でパーティーを開きました。」これは、地域で言うと、グランピング事業になります。「子犬が踊っていた。」エンタテインメント事業が加わりました。

このように、ストーリーに合わせて地域コンテンツを考えていくと、一貫したカスタマーエクスペリエンスが描けてしまうのです。これは、事業開発そのものです。

栗栖 もともと僕らは感性教育の領域でやりたいと思ってプログラムをつくっていたので。本来、対面型のワークショップとして、教育機関とかインターナショナルスクールといったところに教材として展開していくことを考えていましたが、これがコロナになって頓挫してしまい、オンラインでのプログラムに切り替えたんです。

谷中 それが、3月に行われたという、お家の香りで楽しめる子供向けオンラインワークショップ 「 香り感性教育プログラム 」ですね。

栗栖 結果は、保護者さまから「感性教育として新しい」、「子供にこんな才能があったなんて」などすごくいい反応をいただけました。じゃあもっと展開していこうってなった時に、オンラインだからこそ全国展開しやすいと考え、地方創生のコンテキストから地方の名産品の香りでオンライン講座を開催しようというアイデアに至りました。香りって、オンラインだと伝えづらいものだと思っていたのですが、逆で地方には香り資源が豊富にある。

谷中 全国津々浦々、地域には特産品や名産品というものがある。そこに、香りがある。その香りを、地域の子供たちが感じて、オンリーワンの物語を紡ぐというのは、とても面白いと思います。地域の香りから生まれるストーリーは、おそらく地域の方もびっくりするし、とても喜ばれるんじゃないんですかね。

栗栖 そこは、とても期待してます。子供たちが地元の特産品の香りを嗅いで物語をつくるという体験が、地方の教育観点とか経済的な観点とか、地方創生的な観点の効果とか期待できるのではないかと。

わずか1時間で生まれる、地域ビジネスの原石!子供たちの発想が、地域の新しい価値を定義する

谷中 地域の現場でKAORIUM クリエイティブアワードを展開すると、子供たちが紡ぎ出したストーリーそのものが、大人にとっての新規事業開発のネタになると思うんですよね。発想の種というか。ビジネスプロデューサーとしての立場から見ると、KAORIUMのプログラムというのは、地域の事業開発そのものですね。

栗栖 子供のアイデアがそのまま事業になるってすごいです(笑)。

谷中 ポテンシャル大だと思いますね。そもそも、地域ビジネスの開発では、地域の価値を自分たちで定義するというプロセスが、意外と難しいんです。どの地域でも、生活としてそこに住んでいると、どうしても身の回りが日常になってしまうからですね。

栗栖 当たり前というやつですね。

谷中 ですので、地域ビジネスを開発するプロジェクトでは、多くの場合、ワークショップで地元の方にヒアリングしながら、地域の価値になるようなネタを拾い上げていくんです。これって、KAORIUM クリエイティブアワードでやっていることと同じです。子供たちが、香りを入り口としてストーリーを紡ぐ時、意識的ないしは無意識的に、地域コンテンツが含まれる。それは、ある意味、地域資源の価値を定義している行為でもあります。

栗栖 地元の人が、地元の良いところのアイデアを出し合うと、良いアイデアってたくさん出てきそうです。

谷中 ファクトに基づいてストーリーが紡がれますし、そのストーリーには自らの地域体験も入っている。しかも、子供たちや親が考える「こうだったらいいな」という地元の理想像も投影されているわけです。普通にヒアリングしてもなかなか引き出せないアイデアが、KAORIUMならば、わずか1時間で出てくる。これは、すごいことなんですよ。

香りを切り口にするから発掘される!地域を訴求するオンリーワンの価値

谷中 先ほど「地域に住んでると、身の回りが日常になってしまう」というお話をしたのですが、だからこそ地方創生では外からの目線を取り入れることは重要です。そのような観点から、国が地方創生の領域に多額の予算を付けて、全国的に事業を活性化しようとしてきた。地方創生の機運を醸成したのは良かったと思います。一方、国からの事業を受託したのは、結局は都内のシンクタンクとか、広告代理店さんが多かったのが実情ですよね。その事業構造を体感してきた身としては、いろいろ課題も多かったかなと。

栗栖 なるほど。

谷中 広告代理店さんも、そこから再委託されたクリエイターさんも、もちろん地域のリサーチをするんですけども、国からの委託事業なので、限られた時間の中でアウトプットをつくらなければならない。そうなると、結局、“それっぽく”成果物をつくって終わっちゃうんですよ。いかにも代理店テイストの綺麗めの成果物になる。気が付くと、全国各地で同じようなテイストの動画やウェブやチラシができて、っていうのが繰り返されてきました。さらに、事業全体を通じて地域にお金も落ちないという…。

栗栖 コンサルの弊害ってありそうだなと。共通ナレッジをいろんなところで使うが故に、結局アウトプットが同じものになってしまう。

谷中 地方創生で地域経済を活性化したいと考えている地域の皆さんは、自分の地域の価値を事業化して外向けに訴求したいんですよね。ですから、地域の価値を発見するために、外から有識者や事業者を呼ぶのが常套手段なんです。でも、KAORIUMがすごいのは、内発的に地域の魅力を発掘できること。これが、もし「地域の魅力を発見しよう」といったストレートな手段でやろうとすると、いかにもありきたりなアウトプットしか出てきません。地域の香りを入り口にして、自由にストーリーを紡ぐというプロセスを通じて、結果的に地域の価値が発掘されるというメカニズムが秀逸だと思うわけです。

栗栖 もともと香りを言葉にしよう、感性教育にしようってとこから、こういう風に価値を生み出せそうってすごいです。

谷中 地域の価値を見出すプロセスで、実体験を伴う発見はとても重要。いろいろなワークショップが存在しますが、これまで「香り」というアプローチはなかったですね。地域発見系のプログラムでは、子供たちを対象にした“まち歩き”をよくやるんですけど、その時に地域を切り取る手段として活用されるのが「写真」や「動画」です。アウトプット先としてのインスタグラムなどのSNSがあるので、成果がわかりやすいですし、楽しいからみんなやるんです。それはそれで意味がある。ただ「香り」に注目して歩くというワークは、日常生活で目にしているのにスルーしていたものに気づくキッカケになるのが、とても面白い。「これって、こんな香りだったんだ」という発見があると、急に身の回りの事象が主張し始める。世界の見え方が変わる。つまり、地域の価値が浮き彫りになります。

栗栖 東京大学の名誉教授で社会学者の見田宗介さんが書かれた本の中で、世界を見るだけじゃなくて、聞く・嗅ぐ・味わう、と五感を解放していくことによって、空域が広がっていくっておっしゃってたんですよね。「香り」ってまさに、今あるものの再発見と再認識につながるんじゃないかと思います。

谷中 「香り」を切り口にすることで、世界の見え方が変わる。地域に対する理解が深まるってことですね。また「香り」って、みんな表現の仕方が違って、出てくる言葉には人それぞれのリアルな声が含まれていると思います。その視点で言うと、地域マーケティングに直結していると思うんです。

栗栖 すごい!

谷中 たとえば、地域に素敵な自然スポットがあって、そこの「香り」をどう表現するか。その表現そのものが、ウェブ上で発信する時に、ターゲットに訴求するためのキーワードだったりするんですよ。そのキーワードが、地域の子供たちから生まれたとなると、さらに良いですね。

栗栖 確かに。例えば東京で八百屋に並んでるゆずをみたとしても、単純にいち消費者として見てしまうと、「ゆずはゆずでしょう」「どこ産もだいたい同じでしょ」っていう感覚で見てしまう部分があると思うんです。そこに地域ならではのストーリーを提示していたら、今までとは違う共感だったり、イミ消費や体験消費のような要素も付け加えることができると思いますね。

谷中 そうですね。地域の子供たちならではの「香りの感じ方」から造語が出てきて、それが地域を訴求するオンリーワンの要素になる。

栗栖 それがキャッチコピーになるわけですね。

谷中 その通りです。言葉の表現に加えて、ストーリーですね。単なる「香り」の表現のみならず、その地域で、その「香り」を取り巻く日常が切り取られるわけですよね。そこには広告代理店の皆さまには思いつかないようなストーリーが溢れていて、思いっきり地域の事業開発につながります。つまり、香りを入り口として、地域の現状調査、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングまで、すでにできているわけです。あわよくば、4Pの商品化のところまで。もう、マーケティングそのものだと思います。しかも、子供たちが、たった1時間でやっているという…。ある意味、驚愕の地域マーケティングプログラムとも言えます。そして、冒頭にお話したように、子供たちが紡いだストーリーを「地域の歴史に絡める」「自然文化遺産に紐づける」というようなことができると、いきなり本番仕様ですね。ですから、全国の地方自治体が、ポテンシャル対象になります。

栗栖 ワクワクしますね。

KAORIUMの感性教育が地域マーケティングに直結!地域ビジネスの起業家育成プログラムになる

栗栖 KAORIUMクリエイティブアワードのプログラムは感性教育の切り口ですので、地方創生でいうと、教育委員会さまを通しての話になりがちです。しかし、そこだけではなくて、各行政の企画・まちおこし担当というところからも注目していただきたいなと思いますね。

谷中 むしろ、そこにポテンシャルがあると思います。「KAORIUMを使って、地域のコンテンツを発掘して事業化できる。香りを通じて得られたネタをビジネスに落とし込んで、こんなことができるんだ」というのが伝われば、地域づくりに取り組む皆さまから引き合いがあると思いますね。私の経験的には、感性教育から入ってプログラムを展開しているプロセスで、「これって地域のマーケティングに使えるよね」って気づくはずなんです。

栗栖 地方開催する、第2回目のゆずをテーマにしたKAORIUMクリエイティブアワードには期待ですね。

谷中 はい、地域の香りを言語化するというプロセスを通じて紡がれた「キーワード」や「ストーリー」には、オンリーワンの価値があります。地域づくりのイケてる人たち、つまり、イノベーターたちは、そのようなキーワードやストーリーを見て「地域の事業開発に使える!」と必ず注目するはずです。それをヒントに、特産品を開発したり、場づくりをしたり、旅行商品にしたりと、ありとあらゆる事業開発につなげることができます。

栗栖 いろんな地方の方に知っていただきたいです。この秋のゆず以降も、全国津々浦々の果物等のとやっていきたいですね。

谷中 これは、もう、やるしかないですね。私が特に注目しているのは、地域の皆さんが、自分の地域の香りを言語化するということ。つまり、地域から内発的にボキャブラリーが生まれることに、すごく意味がある。これは、とてつもない資源なんです。香りから、地域への理解が深まって、右脳と左脳をつなぐ感性教育に効く。そのプロセスで紡がれた言葉をベースに、地域の事業開発ができちゃいましたという流れができてくる。さらに、インバウンドにも使えるんです。海外の方が地域を訪ねた時に、その地域の香りから描かれたストーリーがあって、もちろんそれは多言語に変換されている前提ではありますけど、香りから生まれた言葉に基づくオンリーワンの体験というのは、外国人にとって「Wao!」となるわけですよ。

栗栖 無形だからこそ、どうとでも使えますもんね。

谷中 ちなみに、地域コンテンツの事業化というと、何億円も稼ぐ一大事業を生み出すことをイメージしてしまう人もいると思いますが、私はもっとマイクロ単位の小さな事業までスコープに入れていいと思うんです。地域内消費のほんの一部を賄う事業を生み出すだけでも、すごいことなんですよ。

例えば、地域の香りから生み出したストーリーに基づいて、小中学生が特産品をパッケージングしたとしましょう。それを地域のお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんが買ってくれたら、結構な金額になるわけです。もちろん、地域外に売ってくこともできるんですけど、地域内だけでも小さいビジネスなら割と簡単にできてしまう。アイデアを商品化して、価値を届けて、対価を頂くって、すごく嬉しいことなんです。対価の形がたまたまお金であるだけの話で、事業の本質は「価値の交換」。だから、楽しいし、嬉しいし、みんなが喜ぶ。

栗栖 みんな喜んでいるっていう成功事例があって、そして注目を集めていきたいです。

谷中 KAORIUMは香りと言語をつなぐシステムで、これを地域というフィールドで行う感性教育がアワードプログラムですよね。ただ、極めて高い確率で地域マーケティングに直結して事業化に拡張していきますので、地域づくりの文脈で言うと、実は「地域ビジネスの起業家育成プログラムです」と言って申し分ないと思うんですよ。

栗栖 起業家教育に興味を持たれてる自治体さんも多いのですもんね。

谷中 非常に多いですね。都道府県や市区町村が、地域づくりの最重要アジェンダとして、地域の起業家育成事業の年間予算を取っているくらいです。

栗栖 なるほど、そしたら、このスキームを共通フォーマット化して手順書ができたら、それをベースにご説明に行くってことも…。

谷中 面白いですよね(笑)。本当にできますよ。

栗栖 今後、INSPIREさんとも是非組ませていただいて、成功事例をわっと広げていけるような気がします。

谷中 そうですね。地域コンテンツの事業化は、INSPIREのイノベーターコミュニティにとっての得意領域。もちろん、香りを切り口として言葉そのもの紡いでいくというプロセスを含めて、日本全国の地域にオンリーワンの価値を生み出していきたいですね。

栗栖 今回の対談もすごいインサイトをいただきました。ありがとうございました。

プロフィール

谷中 修吾

ビジネスプロデューサー/クリエイティブディレクター
BBT大学 グローバル経営学科長・教授
BBT大学大学院MBA 教授

静岡県湖西市出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了。
3歳からマリンバ演奏で舞台経験を重ね、クリエイターとして様々な創作表現活動に従事する。外資・戦略コンサルティングファーム Booz Allen Hamilton にて、政府機関・民間企業の戦略立案・実行支援を経て現職。
マーケティング技法を駆使した事業開発を専門とし、地方創生まちづくりのビジネスデザインを数多く手がける。国内最大級の地方創生イノベータープラットフォーム「INSPIRE」を立ち上げ、超絶まちづくりの集合知を社会にシェアする取組を展開。内閣府「地方創生カレッジ」講師を務め、受講者満足度No.1を獲得。環境省「グッドライフアワード」総合プロデューサー、東京都「東京ベイエリアビジョン」官民連携チームメンバーなどを歴任。世界30ヶ国を遍歴し、国内外の地域創生に専門知見を持つ。
ビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)では、マーケティング/スタートアップ系科目の教鞭を執る。

オフィシャルweb: https://www.shugo-yanaka.com/

栗栖 俊治

SCENTMATIC株式会社 代表取締役

慶応義塾大学大学院を卒業後、NTTドコモにて10年間、携帯電話やスマートフォン向け新サービス・新機能の企画開発に従事し、iコンシェル、しゃべってコンシェル、音声認識機能、GPS機能等のプロジェクトリーダーを担当。
「最高のUXづくり」を徹底して目指した「しゃべってコンシェル」ではグッドデザイン賞ベスト100・未来づくりデザイン賞を受賞。
2015年より3年間、NTTドコモ・ベンチャーズ シリコンバレー支店へ出向。数々のシリコンバレースタートアップを発掘し、NTTドコモ本社事業部門とスタートアップとの協業実現や出資に成功。
2018年、日本へ帰国。2019年11月 SCENTMATIC株式会社を立ち上げ、現在に至る。

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